【小型レシプロソー】自然木、庭木、金属が手鋸のように切れる電動のこぎり【京セラ ASK-1001】

ASK-1001のアイキャッチ(レシプロ)

取り回しが良い京セラ(旧RYOBI)の小型レシプロソーについて、実際に使用している観点からの記事です。

レシプロソーは手鋸に近い感覚で切れる電動工具で、不定形な自然木やパイプなどの形状、金属や樹脂等の切断に適している道具です。

無段階でスピードを変えられるので、金属切断ではディスクグラインダーのように火花を散らさず、ブレード(刃)を変えれば繊維やゴムなども切断することができます。

更に、ブレードのホルダー部分を交換すれば、手持ちのジグソー刃を流用できたり、ワイヤーブラシやヤスリを装着できるようにもなります。

TORIUTA

レシプロ”ソー”と名乗っているけど、実は切る以外のことも色々できる道具なんですね

刃が高速回転するタイプが多い『切断系』の電動工具としては、レシプロソーは速度調整ができるため、安全に扱いやすい部類といえます。

ただし、固定が甘かったりブレードが適切でなかったりすると「思ったほど切れない」となるので、使うには多少のコツと注意は必要です。

目次

レシプロソーについて

レシプロソーとは、Reciprocating Saw(レシプロケイティング ソー)を略した日本での呼び方で『往復するノコギリ』という意味の通り、電動で手鋸のように刃を前後に突き引きして切ります。

名前はメーカーによってバラつきがあり、日本のHiKOKI、BOSCHジャパンでは『セーバーソー』、北米圏などでは『Sawzall(ソーザル)』とも呼ばれたりしますが、どれも同じ道具を指す名称です。

【SAWZALL】
本来はミルウォーキー社(米国)の商標ですが、レシプロソーは同社が1951年に世界で初めて発明した物なので、北米圏ではSawzallがレシプロソーの代名詞にもなっています。
参考:Milwaukee Electric Tool社「HISTORY OF MILWAUKEE」(英語)

大きく分けるとレシプロソーには

  1. 両手で使う大型タイプ(解体作業など)
  2. 手鋸のように片手で使える小型タイプ

の2種類があり、本記事は後者の小型タイプになります。

レシプロソーのメリット

  • 庭木やパイプなど円柱状の物でも安全に切断できる
  • ブレード交換で金属や様々な素材の物を切れる
  • ホルダーを付けえばジグソー刃やヤスリ、ブラシも付けられる
  • 回転式の刃ほど切粉が飛散しない
  • 金属切断ではグラインダーのように火花が散らない

レシプロソーの注意点

  • 引く時だけ切れるので、回転式の刃と比べると切断速度は遅め
  • 細枝などは固定が甘いと往復動作が吸収されて切りにくい
  • ブレードが適切でないと切れない場合がある
  • 刃が挟まれるとキックバックで本体ごと暴れる
  • ホルダーの固定や当て方が悪いとブレードが飛ぶことがある

ASK-1001の外観と各部

今回、庭木の剪定用に買ったのは、京セラ(旧RYOBI)製の小型レシプロソーです。

レシプロソー『ASK1001』の外装パッケージ
外装パッケージ

箱のサイズは、長さ415mm×高さ135mm×奥行90m(実測値)

側面は成人の手のひらよりやや小さいサイズなので、軽く手を広げた大きさ×奥に40cm程度の空きスペースがあれば箱ごと収納しておくことができます。

レシプロソー『ASK1001』の外装を開封した中身
中身と付属品

内容物は『本体』『ブレード2種』『説明書』。

商品画像では黄色が目立つ角度で少しオモチャっぽく見えましたが、実際は黒の色面積が大きく締まりがあるので、パッケージの印象よりも実物の方が断然格好良いです。

コードの長さは2mなので、屋外で庭木を切るなら延長コードはほぼ必須になります。

この園芸用モデル(黄)は100V電源のみですが、DIYモデル(赤)やプロ用モデル(黒)にはバッテリータイプもあるので、コード式が煩わしい場合はそちらの方が良いかもしれません。

付属品のブレード

ASK-1001の付属ブレード

標準で付属しているブレードです。

  1. 木工・樹脂用ブレード(No.68)
  2. 鉄工・ステンレス用ブレード(No.79)

刃は根本から一直線ではなく、材へ食い付くように装着部分からやや『ヘの字』に角度が付けられています。

2つめの白いブレードは『鉄工・ステンレス用』とありますが、軟金属、ダンボール、樹脂なども切れるので多用途に使う事ができます。

京セラのレシプロソー『ASK1001』
付属品の木工・剪定用ブレードを装着

剪定用ブレードを取り付けた姿です。

庭木の剪定で後述しますが、刃の厚さは実測値で0.8mmとやや薄く、ピッチ(刃と刃の感覚)も剪定用としては細目寄りなので、枝を切った断面が付属品とは思えないほど綺麗でした。

ASK-1001に金属用ブレードを付けたところ
付属品の鉄工・ステンレス用ブレードを装着

同じく付属品の金属用ブレードです。

「短い」というのが正直なところで、実際に切断できる有効幅(ワの字の金具から刃が付いている先端箇所まで)は、一番引っ込んだ状態で38mm、一番突き出た状態で48mmほどです。

厚めの金属板や小径の棒、ラックのパイプなどを切る程度であれば「取り回しが良い」とも言えますが、金属加工や解体も視野に入れている場合は、もう少し長い金属用ブレードを買った方が良いでしょう。

TORIUTA

買い足しせずに、初めから色々な素材を切れる点は良いですね

ブレードホルダーと六角レンチ格納部

ASK-1001のブレードホルダーのボルト
ブレードホルダーの六角穴付きボルト

園芸モデルとDIYモデルの違いは、このブレードホルダーがツールレスかどうかです。

  • 園芸モデル(黄):ボルトで固定するタイプ
  • DIYモデル(赤):レバー式のツールレスタイプ

標準付属は上の通りですが、どちらも本体スペックは同じでホルダーも後から買って交換できるので、この2機種で迷った場合は「本体の色の好み」や「ツールレスが欲しいかどうか」で選んで良いでしょう。

個人的には「ツールレスでなくても十分」という感想なのですが、ちょこちょこブレードを交換する場合や、茂みの中で刃の交換作業をする場合(ネジやホルダーを落とすと見つけにくい場合)などは、ツールレスも選択肢に入れると良さそうです。

別売品のホルダーには以下のような物があります。

  • レシプロソー刃用(園芸用に付属)
  • ツールレス(DIY用に付属)
  • ジグソー刃用
  • ワイヤーブラシ/ヤスリ用
TORIUTA

手持ちのジグソー刃を流用できたり、窓開けやブラシ・ヤスリ掛けができるようになったりと、用途の幅が広がります

ASK-1001のホルダーを外したところ
ブレードホルダー(ボルト式)と本体の取り付け軸

ブレードホルダーの取り付けは、ボルトが本体軸の凹部分に引っ掛かるように締めると脱落しなくなります。

ASK-1001のブレードホルダー部分
ブレードホルダー(六角穴付きボルト)の正面アップ

本体軸には溝が切られており、六角穴のボルトを締めるとホルダー全体が上がり、ブレードを挟み込んで固定する構造です。

ASK-1001の六角レンチ収納箇所1
六角レンチの収納箇所

ブレード交換に使う六角レンチは手元のガード部分に格納されています。

これのおかげで、ブレード交換時に「六角レンチどこにあったっけ?」「えーと、サイズは…」などと探さなくて済むため、ツールレスタイプでなくても不便さはあまり感じません。

TORIUTA

地味ですがとても助かります

ASK-1001の六角レンチ収納箇所2
六角レンチを取り出したところ

六角レンチは作業時の振動で脱落する事もなく、しっかりしたホールド感で収まっています。

よくある一般的なL字型なので、仮に無くしてしまっても入手性に問題はないでしょう。

ロックボタン

ASK-1001のトリガーとロックボタン
丸いボタンはロックボタン

トリガーを引き続けていると腕が疲れてしまう場合は、真ん中のロックボタンを押し込めば電源ONのまま固定できます。(回転数100%のみ)

設計は右利き用になっていて、ロックボタンは本体の左側にだけ付いています。右利きなら片手でも親指で押しやすいのですが、左利きの方は押しにくいかも知れません。

左手でも「人差し指の付け根」で押して片手操作はできるものの、フル回転時に握り込むと意図せず押してしまう位置でもあるので、左利きの方はご参考まで。

重量と持ち心地

ASK-1001を持ったところ
手に持った大きさの参考

重量はブレード込みで1.2kgほどと軽く、重心バランスが良いのでしっくりと手に馴染む持ち心地です。

手がやや小さめな自分でも、グリップ感は良好で握りにくさはありません。今回、2.5mほどの高所で使ってみましたが重さの負担はあまり気になりませんでした。

以前、海外版RYOBI(京セラとは別企業)の大型レシプロソーを持っていたのですが、両手で扱う大型の物と比べると取り回しが格段に楽です。

庭木を切る(剪定と芯止め)

切る木

高さをもう少し低くする為に、長年切って止めていた箇所より更に下の位置で幹を切ります。

まずは周辺の枝から下ろします。

付属ブレードの切断面について

瑞々しい枝の切断面1

画像ではちょっと伝わりづらいかもしれませんが、驚いたのは付属ブレードの切断面がとても美しいこと。

生木の瑞々しさが透けて現れていて、「堅い樹皮の中には水が通っている」という知識上では当たり前のことを、実感を持って改めて認識させられるような断面です。

枝なのに「果物の輪切りっぽい」というのが見た時の第一印象でした。

瑞々しい枝の切断面2
ヒメシャラの切り口

生木を切る剪定用の手鋸は、水分を含んだ切粉が詰まらないように刃が厚く、素早く切れるようにピッチ(刃の間隔)も粗めであるのが一般的です。

「切る」というより「削り切る」に近く、表面はザラついて荒れた断面になるため、生木ならではの”しっとり感”はあっても、ここまで透けるような艶感として目にした事はありませんでした。

人間視点では、『木』といえばゴツゴツした樹皮や、叩けばコンコンと鳴る乾燥材などをイメージしますが、木に付く虫などにとっては、もっとフレッシュな果実に近い存在に見えているのかも知れません。

切った木の断面

こちらは一番上の幹部分です。結構な重量なので下ろすのに少し苦労しました。

そのまま切り倒すと下の枝や植木を傷付けてしまうため、片手で押さえながらロープで吊りつつ、もう片手で『奥から』と『手前から』の2段階で切っています。

癒合剤を塗った切り口
切り口を整えて癒合剤を塗布

木にとって切り口は傷口なので、保護のために殺菌剤入りの癒合剤(塗り薬のようなもの)を塗っておきます。

芽吹きの季節になれば、倍返しくらいの勢いで脇からブワっと芽が出てくるのだから、生命とは逞しいものです。

切った枝と幹

今回のレシプロソーで切った幹や枝。
一部は余分な小枝を払って乾燥させ、自然な形を利用した小棚か何かを作ろうと考えています。

切断能力について

切ったコブ部分(13kg)

てっぺんの幹部分です。

この幹の切り口は、Φ100~110mm程度で重量は15kgほど。
ASK-1001の公称スペックを2倍以上オーバーしている数字ですが、十分に切断可能でした。

TORIUTA

刃を過剰に押し付けない、幹に挟まれないように切断の隙間は確保する、などの注意は必要です

ただ、この太さになってくると、付属品の剪定用ブレード(0.8mm厚)では木屑が排出し切れず、切っていて若干滑る感覚が出てきます。このブレードで生木を切る場合は、Φ80~100mm辺りが厳しくなってくるラインかな、という印象。

レシプロソーでΦ80mm以上の生木を切るのであれば、刃厚が1.2mm程度ある太枝用ブレードや、ストロークを多く取れる200mm以上の長さのブレードに換えた方が良いと思います。

手鋸でこの太さの枝を切る場合は、神沢精工の『SAMURAI』シリーズの剪定鋸が別格なのでおすすめです。ちょっとした丸太程度でもザクザク切れてしまうので、従来の手鋸で苦労した経験がある人であれば、思わず笑ってしまうくらい手道具の概念が変わるかも知れません。

切った枝
切ってから2ヵ月ほど経過した枝

左2本が手鋸(SAMURAI)で切った枝、右2本がレシプロソーで切った枝の断面です。

太さは左から順に、約65~70mm、65mm、40mm、50mmで、体感的に付属ブレードで「丁度良い」と感じたのは40~60mm辺りの太さでした。

ASK-1001のスペック表記は『庭木の切断能力:45mm』なので、やや控えめな数字と言えますが、想定しているのは大体この辺りの太さでしょうか。

TORIUTA

イメージとしては、親指と中指で軽く『C』の形にしたくらいの太さが付属ブレードで切りやすい太さです

逆に、20mmに満たないような細枝はレシプロソーにはあまり向いていません。

可否で言えば切る事はできますが、

  • 生木は乾燥材よりも弾力性があって”しなる”
  • 空中で固定しづらくレシプロソーの往復運動が吸収されやすい

ので、ノコ刃が引っ掛かってブルブルしているような状態になりやすく、手鋸よりもむしろ切りにくいケースが多いです。

なので、レシプロソーを買えばこれ1つで「全ての枝がサクサク切れる」と期待してしまうと肩透かしを食らうかもしれません。

TORIUTAの場合
  • 約30mm以下→手鋸か剪定バサミ
  • それ以上→レシプロソー
  • 太枝は気分と状況次第でSAMURAI鋸

と、手道具も1つか2つ腰に下げて併用するのが良いと思います。

(余談)ブレードの摩耗について

使用後のブレード

ブレードに印字してあるメーカーロゴと型番は、今回の使用1回で消し飛びました。

切れ味まで落ちている訳ではないので実用性に問題はありませんが、若干気になったので補足的に書いておきます。

下の画像は、前後に動く往復動作の中でブレードが一番伸びている状態です。(45mmはメーカーによる庭木の切断能力値)

ブレードの摩耗部分
ブレードが摩耗しやすい位置

レシプロソーは押さえ金具に当てて刃の根本で切るのが基本ですが、ブレードの装着部付近には

  • :金具の内側に隠れて全く擦れない部分
  • :ストロークで内側に隠れたり外に出たりする部分
  • :切る対象が円柱状だと接触時間が短い部分

があり、実際には付け根の初めの刃から指1~2本分くらいの位置から摩耗します。

マキタ、HiKOKI(旧・日立)、DeWALT、Milwaukee、BOSCHなどの主要メーカーは流石と言うべきか、この赤の部分にブレードの型番を縦書にしたり寄せたりして、刃の交換時期でも型番が残りやすいようにデザインされています。

交換時にまず確認するのは型番やメーカー名なので、消えやすい位置にある京セラのデザインは、個人的には「ちょっと勿体ないかな」という気がします。

ASK-1001のスペック比較

ポイント
  • 園芸モデルとDIYモデルの基本スペックは同じ
  • DIY用はレバー式のツールレスホルダーが標準装備

園芸モデルでもツールレスのブレードホルダーは後から買って取り付け可能

モデルASK-1001
(園芸モデル)
ASK-1010
(DIYモデル)
切断能力庭木 (径)45mm45mm
木材 (厚)40mm40mm
塩ビパイプ (径)120mm記載なし
軟鋼材 (厚)3.5mm3.5mm
ストローク数0~4,500min-10~4,500min-1
ストローク量10mm10mm
電源単相100V単相100V
電圧2.0A2.0A
消費電力180W180W
質量1.2kg1.2kg
付属ブレードNo.68(木材・樹脂)No.68(木材・樹脂)
No.79(鉄工・ステンレス)No.79(鉄工・ステンレス)
ブレードホルダー六角レンチで締めるタイプツールレスタイプ
TORIUTA

ツールレスホルダーは便利そうですが、頻繁にブレード交換しない限り「買っておけば良かった…」と後悔するほどではありません

まとめ

ASK-1001を実際に使ってみて、特に印象的だったのは付属ブレード(No.68)の切断面の美しさでした。

スペック上では庭木の切断能力は45mmとされていますが、40~80mm程度の枝なら問題なく切る事ができます。腕力だけに頼らない電動アシストが付いたノコギリのようなものなので、数をこなすとなると、やはり手鋸よりも腕の負担が少なく、作業が楽になります。

木工用途ではあまり使われない電動工具だと思いますが、無段階でスピード調整が可能で、速度50%程度であれば丸ノコの静音モードより格段に静かで切粉もそれほど飛散しません。

レシプロソーは、自然木を切る場合は手鋸とチェーンソーの中間、金属を切る場合は金切鋸とディスクグラインダーの中間くらいの切断力があり、ホルダーを交換すれば、ジグソーの刃、レシプロ専用のヤスリ、ブラシ、スクレーパーなどを取り付けて、用途を拡張することもできます。

剪定用だけではなく、廃材の解体や磨き作業、雨天時や梅雨の時期でも屋内で使える電動工具として、手元に1台あると意外な使い道が見つかるかもしれません。

この記事を書いた人

TORIUTAのアバター TORIUTA とある作家

金工、鋳金、木工、鉛筆画などで20年ほど色々制作しています。当ブログでは、本業では紹介する機会のないDIYやモノ作りに役立ちそうな情報、自分が知りたかったこと、道具にまつわる体験談などを書き連ねて行きます。

アイコンはTORIUTAの名前の由来となったヒガラ(手描き)です。

目次